口腔ケアは、健康経営優良法人の認定項目に単独の評価項目としては存在しません。それもあってか、「歯・口腔の健康は健康経営とは少し別の話」と捉えている担当者も少なくないようです。
しかし現在、国は2022年の閣議決定で「生涯を通じた歯科健診について具体的に検討する」と明記し、企業の健康診断に歯科健診が加わる可能性の議論が続いています。健康経営アドバイザーの公式テキストにも、歯科保健が全身の健康や生活の質(QOL)と密接に関連することが取り上げられています。
義務化が確定してから動き始めると、他社と横並びになるだけです。今動いておくことで、効果検証のデータを先に積み上げられます。
1. なぜ今、歯科健診の義務化が議論されているのか
国が歯科健診の義務化を検討している背景には、歯科保健が全身の健康に深く関わるという認識の広まりがあります。歯周病は糖尿病や心疾患との関連が厚生労働省のe-ヘルスネットにも掲載されており、口腔の健康を放置することが医療費の増大につながるという問題意識が国レベルで共有されています。
2022年の閣議決定(骨太の方針)に明記されて以来、具体的な制度設計の検討が続いています。まだ確定はしていませんが、「検討されるほど重要な分野」として捉えることが、先手を打つ担当者の視点です。
参考:
2. 歯が痛いのに出社している社員は、どれくらいいるでしょうか
「歯が痛いけど仕事が忙しくて歯医者に行けない」という状況は、職場でも珍しくありません。こうした状態が続くと、集中力や作業効率に影響します。これがプレゼンティーイズム(出勤しているが本来のパフォーマンスを発揮できていない状態)と呼ばれる問題です。欠勤(アブセンティーイズム)と違って見えにくいぶん、対策が後回しになりがちです。
口腔ケアへの取り組みは、従業員の生産性を守る施策として位置づけられます。健康経営の目標に「生産性向上」を掲げている企業にとって、見落とせない視点です。
3. 義務化前に動いた企業だけが持てるもの
義務化されてから歯科健診を導入しても、それは「対応しただけ」です。一方、今から取り組んでいる企業は、施策の前後で受診率や従業員の意識がどう変わったかのデータを蓄積できます。
このデータは健康経営優良法人の申請書にも活用できますし、社内で予算を取る際の根拠にもなります。義務化後に「うちはすでに効果検証済みです」と言える企業と、「これから始めます」という企業では、対外的な印象も大きく変わります。
予算の確保や使い道に迷っている場合は、「健康経営の予算は何に使うべき?はじめての担当者向け優先順位の決め方」も参考にしてみてください。
4. 担当者が今すぐできる現実的な一歩
歯科健診の義務化に備えるといっても、いきなり大規模な施策を動かす必要はありません。まず始めやすいのは、従業員への情報提供です。「なぜ歯科受診が必要なのか」「定期的なケアでどんなリスクが下がるか」といった内容を届けることは、健康経営優良法人の認定要件にある「ヘルスリテラシーの向上(教育機会の設定)」として申請書に記載できます。
大切なのは記録を残すこと。参加者数、受診前後の意識変化、受診率の推移などを記録しておくと、後々の効果検証に使えます。負担を最小限に抑えながら継続できる仕組みを選ぶことが、長続きのコツです。
担当者の運営負担を抑えた施策の選び方については、「健康経営担当者の負担を減らすには?兼務でも回せる運営の考え方」で整理しています。
参考:
準備した企業が、義務化後も強い
歯科健診の義務化はまだ確定していません。しかしだからこそ、今が先行できるタイミングです。義務化の議論が進むほど、先に取り組んでいた企業のデータと実績に価値が出てきます。
何から始めればよいかわからない場合は、まず従業員への情報提供から着手するのが現実的です。小さく始めて、記録を残す。それだけで、義務化後に大きな差がつきます。
もし「仕組みごと用意したい」とお考えであれば、LINEを使った口腔ケアの情報提供プログラム koko care も選択肢のひとつとしてご覧いただけると幸いです。

